十種大祓とくさのおほはらひ

高天原たかまがはらに神留座かみづまりまします皇神すめかん等たち、鑄ゐ顯あらはし給たまふ十種とくさ瑞津みつの寶たからを以もちて、天照國あまてるくに照彦てるひこ天火明あめほあかり櫛玉くしたま饒にぎ速日はやひの尊みことに授さづけ給たまふ事ことを誨おしへて曰のたまわく、汝いまし此この瑞津みつの寶たからを以もつて中津國なかつくにに天降あまくだり、蒼生あをひとぐさを鎮しづめ納おさめよ。蒼生あおひとぐさ及および萬物よろづものの病疾やまひの辭こと阿羅婆あらば、神寶かんたからを以もつて、御倉板みくらいたに鎮置しづめおきて、魂魄みたま鎮祭しづめまつりを為なして、瑞津みつの寶たからを布留部ふるべ其その神祝かんほぎの詞ことばに曰いはく、
甲きのへ乙きのと丙ひのへ丁ひのと戊つちのへ己つちのと庚かのへ辛かのと壬みづのへ癸みづのと
一ひ二ふ三み四よ五い六む七な八や九こ十と瓊にの音おと
布留部ふるべ由良ゆら由良ゆら如此かく祈所為婆いのりてせば、死まかる共とも更さらに蘇生いきなんと誨給おしへたまふ。天神あめのかみの御祖みおや御詔みことのりを禀かけ給たまひて、天磐船あめのいはふねに乘のりて、河内國かはちのくに河上かはかみの哮峰いかるがみねに天降あまくだり座ましまして、大和國やまとのくに排尾きひの山やまの麓ふもと、白庭しらにはの高庭たかにはに遷うつし座ましまして、鎮齋いつき奉たてまつり給たまふ。號なづけて石神大神いそのかみおほんがみと申まうし奉たてまつり、代々よよ神寶かんたからを以もつて、萬物よろづものの為ために布留部ふるべの神辭かんことを以もつて司つかさと為なし給たまふ故ゆゑに布留ふる御魂神みたまのかみと尊敬そんけいし奉たてまつり、皇子すめみこと、大連おほうむらじ、大臣おとど、其その神武かんたけきを以もつて齋いつきに仕つかへ奉たてまつり給たまふ物部もののべの神社かんやしろ、天下あめがした、萬物聚類よろづもののたぐい化出なりいでん大元おほもとの神寶かんたからは、所謂いはゆる、瀛津鏡おきつかがみ、邊都鏡へつかがみ、八握劔やつかのつるぎ、生玉いくたま、死反玉まかるがへしのたま、足玉たるたま、道反玉みちかえしのたま、蛇比禮おろちのひれ、蜂比禮はちのひれ、品品物比禮くさぐさもののひれ、更さらに十種とくさの神かみ。
甲きのへ乙きのと丙ひのへ丁ひのと戊つちのへ己つちのと庚かのへ辛かのと壬みづのへ癸みづのと
一ひ二ふ三み四よ五い六む七な八や九こ十と瓊にの音おと
布留部ふるべ由良ゆらと由良ゆら加之かし奉たてまつる事ことの由縁よしを以もつて、平たいらけ久く聞食きこしめせと、命いのち長遠ながく、子孫しそん繁榮はんえいと、常磐ときはに堅磐かきはに護まもり給たまひ幸さいはひ給たまひ加持かじ奉たてまつる。神通じんつう神妙じんめう神力しんりき楫かじ。